Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「各務と、幸せになれよ。おじさんの事件とか、富田の事件とか、いろいろあって疑心暗鬼になる気持ちはわかるけど、あいつが君を誰より大事に想ってることだけは間違いない。キズナでもずっと茉莉ちゃんのこと目で追っていたしね」
どこか吹っ切れたように学くんは微笑み、「じゃ、もう行くね」と手を振った。
「うん、ありがとう」
手を振り返して、その手をゆるゆると胸へ抱き込む。
違うんだよ、学くん。
彼が私に優しいのは、私が彼の妹で、お父さんの娘だから。
私たち、離婚するんだよ。
小さく口の中でつぶやいて、波のように押し寄せる切なさに立ち尽くす。
好きなのに。
こんなに好きなのに。
どうして会えないの?
逢いたい。
あなたに逢いたいよ、クロードさん。
ワガママな自分が声を上げ、バカなことはやめろと諫める声を徐々に駆逐していく。
だって離婚届出してないんだから、法律的にはまだ夫婦。
バレンタインのチョコくらい渡しに行っても、全然おかしくない。
それくらい、許されてもいいんじゃない?
彼はまだ、私が気づいてること、知らないんだから。
チョコを渡すだけ。
ほんの少し、顔を見るだけ。
そして、今までのお礼を言う。それだけ。
自分の気持ちを告げたり、彼を困らせたり、絶対しないから。
だから、お願い神様。もう一度、彼に逢わせて――……