Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
聞き覚えのある高い声につられて視線を巡らすと、見覚えのあるキツイ眼差しとぶつかった。
「安藤さん……」
歩道の真ん中でこっちを凝視していたのは、ピンクのファー付きピーコートを着た女性。
以前勤めていた会社で同期だった、安藤妃奈だ。
――課長ぉまた宮原さん給湯室でサボってましたよー。
――ちゃんと仕事してくれないと、わたしたちまで同類って目で見られて困るのよ。わかってんの?
サクランボ色の唇から吐き出された毒のある言葉が次々に蘇ってきて、表情が固く強張るのがわかった。
課長が転勤した後も、彼女だけは何が気に入らないのか随分突っかかってきたからな。苦手意識がどうしても消えない。
「え、何何、宮原さん女子会やってたの? 週末なのに寂しすぎない? あ、もしかして合コンだったとかぁ?」
安藤さんは香ちゃんたちをチラリと見て、これ見よがしに隣の男性の腕へしがみつく。身なりからすると、結構大手にお勤めの彼氏のようだ。
「なるほどねぇー寿退社だって聞いたけど、やっぱあれ嘘だったんだ。やぁだ、そんな見栄張らなくていいのにぃー」
「ちょっあんたね――」
声を上げようとした香ちゃんを、「大丈夫だから」って止める。
「でもっ」
「いいのいいの。こんなところで立ち止まってると迷惑だし、早く行こ」