Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

反論すればするほど、相手は揚げ足をとってくる。
今までの経験から身に染みている私は、もの言いたげな2人を促して立ち去ろうとした――

その時だ。
大きなSUVが一台前方から滑らかに走り込んできて、私たちのいる歩道のすぐ脇にピタリと停車。

圧倒的な存在感を放つ漆黒の巨大なボディに、周囲が一気にざわついた。

「うそっすっごい車!」
「うわマジかよ、ランボルギーニじゃん! かっけー!」
「え、何よ何? 外車?」
「超高級車だよ、走ってるとこ初めて見た!」

興奮気味な安藤さんと彼氏&その他大勢の声が聞こえるような――いやいやそれよりも!

ええとこれ、妙に既視感(デジャヴ)が……何度も乗ったことある、ような……
まさか、と思うけど……

立ち竦む私の前でカチャッとドアが開き、運転席から鍛えられたシルエットが姿を現す。

やっぱりクロードさん!

チャコールグレーのスーツにダークネイビーのニットを合わせたファッショナブルな全身が夜の街に現れるや否や、あちこちから感嘆交じりの黄色い声が飛びかった。

「茉莉花」

もちろん彼にとってはそんなこと日常茶飯事。
ギャラリーを一顧だにせず、颯爽とこちらへ向かってくる。

それがまたランウェイを歩くトップモデルのように決まっていて、観客(あえてこう呼ぶ)の息を呑む音がさざ波のように広がっていく。

私は頭を抱えたくなった。

実は、こういうことは初めてじゃない。
私が夜出かければ必ず自分が迎えに来てくれるか、来られない時は会社の車を寄越してくれる。
海外暮らしが長いせいか、犯罪に対する危機意識が日本人より高いんだと思う。

過保護だなと多少感じつつも、最初は特別扱いされてるみたいで嬉しかった。

愛されてるんだ、って思ってた。

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