Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
変わったかな、って私の台詞をかき消す大声でいきなり香ちゃんが叫び、同時にガタンッ! と大きな音を響かせて椅子から立ち上がった。
半個室とはいえさすがに周囲から何事か、という視線を浴びてしまい、「すみません、お騒がせしました」と3人そろってぺこぺこ頭を下げておく。
「ど、どうしたのよ香ちゃん」
「ごめんごめん、ちょっと興奮しちゃって。マスターの“オーナーだから一番偉い、やりたい放題やっていい”って台詞でピンときたんだ」
「「……はぁ?」」
なんのこと?
私と知依ちゃんは顔を見合わせる。
「もしかしたら、おじさんの事件、最上社長じゃなく、それよりずっと上の方が関わってる可能性があるかも」
「最上社長より上?」
「どういうこと?」
「ちょっと耳貸して」
目を輝かせて手招きする彼女へ、私たちは身体を近づけて耳を澄ます。
「あたし、パーティーの時に教えたでしょ、うちの社長は自分がリーズグループの次の総帥だと考えてるけど、資質に欠けるって」
言われるまま李偉平社長の姿を思い出し、首を縦にする。
資質云々はわからないものの、かなり態度は大きかったよね。
不倫相手同伴で堂々と来てたし。
「現総帥のフレデリック様は独身。一番近い血縁者であるうちの社長は資質的に問題あり。内部では、次期総帥の椅子を巡って熾烈な勢力争いの真っ最中なのよ。何しろ世界でも有数の大富豪だもんね。後継者の座は、関係者なら誰だって喉から手が出るほど欲しいってわけ。でね、もしここで、総帥に隠し子がいる、なんて事実が明らかになったら、どう? さらにその子は、赤ん坊を生んでいた」
香ちゃんは、私たちをそれぞれ見つめて、語気を強める。
「今までの勢力図が全部ひっくり返るくらいのインパクトよ、間違いなく」