Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

それって……つまり?

私は無意識に、ごく、っと無理やり喉を塞ぐ何かを飲み下す。

「つ、つまり、クロードさんは現総帥の孫、かもしれない、っていうこと?」

上ずった声が、震えてる。
リーズグループの総帥? まさかそんな大それた話になるなんて思わなくて。

思わずキョロキョロ、背後を確かめちゃった。
誰かに盗み聞きされてたら大変だ。

「そ、総帥に隠し子がいるなんて噂、内部では流れてるの?」

恐る恐る聞けば、香ちゃんは「んーん、全然」とあっさり否定。

「何しろフレデリック様って、全然女っ気なしで仕事の鬼だからさ。ゲイじゃないかって噂もあるくらい。でも、だからこそ、もし跡継ぎになりそうな血縁者が現れたら、大騒ぎになるよね」

知依ちゃんも事態を理解したのか、何度も強く頷いた。

「間違いなく、世界経済に影響しちゃうレベルの一大事だよ。どうしても自分の側に抱え込みたい人たちが暴走した(・・・・)としてもおかしくないし、もしかしたら総帥さん自身の指示があったのかも」

「反対に、自分たちが後継者レースで主導権を握ろうと思ってた奴らにとっては、その子はどうしても表に出てきてもらっては困るわけよ。そんな情報は、最初からなかったこと(・・・・・・)にしてしまいたい――って、ごめんね。茉莉花、ズバズバ言っちゃって」

「う、ううん。大丈夫」

「あ、じゃあシェルリーズの社長なんか怪しいんじゃない? 自分が次期総帥になれるって思ってるんでしょう?」

「あぁうちの李社長か。間違いなく怪しいね。日本に来る前はシンガポールの本社に勤めてたから、隠し子がいたなんて極秘情報も入手できるかもしれないし……」

どんどん進んでいく話に取り残され気味の私は、冷や汗をかきかきかろうじて首を縦に振る。

なんだかくらくらしてきた。
あまりにも壮大なスケールすぎて……。

ただ一方で、ありえなくはないって気もした。

最上社長だけの問題って考えるより、ずっとスムーズに、あの事件までの流れも含めていろんなことが説明できる、かもしれない。

世界規模の巨大な財産と権力が絡んでくるんだもの。
手に入れるためなら人ひとり殺すことも厭わないって連中がいても、おかしくない。

せっかくのビーフシチューに手をつける余裕は、もはや3人ともなくて。
ただじっと、頭の中で新たな説を咀嚼し続けた。

< 277 / 402 >

この作品をシェア

pagetop