Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「は!?」
「えぇっ?」

ギョッとフリーズする2人へ私は身を乗り出し、考えをまとめながら口を開く。

「私が、犯人の顔を思い出した、って噂を流すの」

「思い出したの?」

「まさか。そもそも顔なんて見てないよ。声しか聴いてない。だから、ただ噂として流すだけ。でも富田が殺されたことから考えても、真犯人はあの事件の真相が暴かれることを恐れてる。刑事さんも言ってたけど、それなら私のことも同じように恐れていて、私の動向をすぐにキャッチできる位置で見張ってる可能性も十分――」

「見張ってるって、なんの話ですか?」

「きゃあっ!」
背後で響いた男性の声に、バクンッと心臓が天井まで跳ね上がった心地がした。
椅子から落ちそうになりながら全力で振り返ると、お盆を持ったスタッフの男のコがきょとんとした表情で立っている。

「びびびびっくりしたぁ……なんだ、トミーか」

香ちゃんたちも同じだったようで、シンクロした仕草で胸を撫でおろす。

「すみません、驚かせてしまいましたか?」

しばらく会わないうちに随分上手くなったらしい日本語で流暢に言った彼は、微笑みながらテーブルへピザを置いた。
「あれ、全然食べてないじゃないですか。美味しくない?」

「ううんっそんなことないよ。ただちょっと、話に夢中になっちゃって」

「それならよかった。このピザ、ぼくが作ったんですよ」
「え、トミーが作ってくれたの? 食べる食べるっ」

すぐに香ちゃんの顔がわかりやすく華やぐ。
愛の力は偉大だなぁ。

勧められるままアツアツのピザを手に取りつつ横目で伺っていると、香ちゃんはトミー君にバイトの終わり時間を聞いてる。
一緒に帰る予定らしい。
丁寧な態度は崩さないものの、明らかに彼の方もまんざらでもない感じ。こうしてみると、爽やかなカップルって風でお似合いじゃない?

私と知依ちゃんは笑い交じりの視線を交わし、新カップル誕生か、と頷き合ったのだった。

< 280 / 402 >

この作品をシェア

pagetop