Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
え、何これ……
大体の内容を把握するにつれ、困惑の余り眉間に皺が寄っていく。
彼が提示してきた条件は、私たちが住んでいたマンションの部屋を私のものに、さらに彼の個人資産の80%を慰謝料として私に譲渡するというもの。またそれとは別に、柊馬への学資援助については彼が就職して独り立ちするまで、クロードさんの方で継続して行う、とある。
相場より妻側の取り分が多い理由は、この離婚が全面的に夫側の非によるものであり、深く反省の気持ちを示すため、と書かれてる。
2ページめ以降は彼の財産の詳細リストらしい。
日本、シンガポール、アメリカ、……世界各国の銀行に入ってる預金額だけでも、数えることすら面倒になるほどゼロがついてて、眩暈がしそう。
加えて、不動産に株、債券……えぇえええ?
慰謝料の相場なんて知らない。
けど、いくら夫側に非があるって言ったって、さすがにこんなのもらいすぎでしょう?
いや、そもそも離婚を言い出したのは私だし。
クロードさんに非なんて……とそこまで考えてから、ハッと閃いた。
もしかして、こういう形でお父さんの死に責任を取ろうとしてるんじゃ?
それも含めて、“離婚前提の結婚”だったとか?
そんな……そんなことしてほしいなんて、私が思う訳ないのに。
「くっクロードさん、あのっ……」
「それから、これも」
反論の声を察したようにもう一通、無理やり押し付けられたのはハガキサイズの封筒。入っていたのは、一枚の紙……世界一周ファーストクラスの旅、旅程表!?
「新婚旅行も何も連れて行ってやれなかったからな。そのお詫びだ。ゆっくりリフレッシュしてくるといい」
淡々と彼が続けた説明によると、飛行機もホテルもすでに予約済みで、およそ1年かけて世界1周することになるらしい。
旅行中の困りごとに関しては、専任のコンシェルジュが24時間質問を受け付けてくれる――
いやいや待って。
そこまで読んで、さすがにおかしいと思った。
さらっと言ってくれちゃってるけど、このタイミングといい内容といい、よくよく考えたら私を蚊帳の外へ追い出そうとしてない?