Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「それはまだ知らない方がいいわ、あなたの身の安全のためにね。もうちょっと待って。今、クロードがインターポールと日本の警察を連れて、そいつのところへ向かってるのよ。もうすぐ全部終わるから」
へ?
「い、インターポールっ?」
フィクションの中でしか聞いたことのない、馴染みのない単語にギョッとした。
どういうこと? 犯人は外国人なの?
よくのみ込めていない私に理解を示すように、高橋さんは小さく頷いた。
「ええとね、まず大前提として言うと、お父様の事件の真犯人は一人よ。指示役も実行犯もいない。たった一人が起こした事件だった。そしてね、その犯人――Xとしておきましょうか――こいつはね、ある国際的な犯罪組織の幹部だったことがわかっているの。だからインターポールの協力を仰いだのよ」
「国際的な……」
「プランZ、通称プラゼットと呼ばれている組織よ。知ってる?」
「いいえ」
全然聞いたことがない、と首を振る。
「表にはあまり出てこない名前かもしれないわね。専門家の間ではよく知られた名前なんだけど。とにかく下部組織を多く抱えていてね、今日本で話題になってる振り込め詐欺やアポ電強盗、ランサムウェア攻撃みたいな新しいタイプのものはもちろん、海賊を雇って古典的な船舶襲撃なんてことまで、世界中で幅広い犯罪に関わってると見られているわ」
まず証拠が集まりやすい国際的な犯罪でXを逮捕し、余罪を追及する中で15年前の事件へ持って行く予定なのだ、と説明されて呆然とする。
なんだかドラマか映画の話みたいで……
ううん、待って。
一体そんな犯罪者とうちのお父さん、どんな関係があるっていうの?
その疑問を口にしてみたら、「ちょっと長い話になるわよ。覚悟してね」と釘を刺され、「ははいっ」と居住まいを正す。
「あぁごめんなさい、緊張しないで。順を追って説明するから、食べながら聞いてくれればいいわ」
「ええと……はい」
頷いたものの、正直なところ食欲なんかもう全然沸かない。
それでもせっかくオーダーしてくれた彼女の手前、なんとかクロワッサンの残りをコーヒーで流し込み、次なる言葉を待ち受けた。