Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

高橋さんはコーヒーカップをソーサーへ置くと、おもむろに口火を切った。

「……まず、クロードがリーズグループの創業家の血筋だということ、後継者の椅子を巡る争いにクロードとあなたのお父様は巻き込まれたということ――桜木さんの所へ行ったのなら、そこまではもうわかってるわね?」

「え……どうして桜木さんの所へ行ったこと……っ!?」

やっぱりスマホに追跡アプリが!?
と目を丸くすると、悪戯っぽそうな視線がきょろっと泳いだ。

「ふふ、まぁ“壁に耳あり障子に目あり”ってことかしら。あなたは大事な証人だから、二重三重でガードがついてるのよ」

が、ガード?
どういうことだろう……誰かに尾行されてたとか?
全然気づかなかったけど……。

若干引き気味の私を気にすることなく、「さて」と相手は続けた。

「じゃあクロードの方はいつ、どうやって自分の生い立ちを知ったんだと思う?」

「生前の私の父から聞かされていたんじゃないんですか?」

私の答えに、高橋さんは首を振る。
「あなたのお父様は、最後まで本人には何も言わなかった。クロードに明かしたのは、あなたのお母様よ」

「え……お母さん? 私の?」

お母さん、そんなこと一言も言ってなかったのに……。

「彼女は生前のお父様から、クロードについて聞いていたみたい。さらに事件の後桜木さんと会い、リーズグループがクロードを探していることも知って、事件の真相がなんとなく見えていたのね」


――あぁ……そういえば、割と冷静に聞いてらしたわ。もしかしたら、ご主人から子どものことは聞いていたのかもしれないって、チラッと思ったくらいよ。

桜木さんの予想は当たってたんだ。
お母さんは、クロードさんの存在を前から知っていた。


「だから事件の後、クロードに対して何か言わずにはいられなかったのね。責めるつもりはなかったんでしょうけど、クロードからしたら、お前のせいだと言われているように聞こえたかもしれない。実際彼は大いに自分を責めて、そして事件の解決を決意した――」

それから高橋さんの口から語られたのは、事件の後からこの15年、リーズグループ内部で彼が過ごしてきた激動の日々だった。

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