Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「面談の席で彼は自分が何者か、ようやくフレデリック総帥に打ち明けたの。罪を認めてくれればよし、認めてくれないなら自分はあなたの敵に回り、総帥の椅子を奪ってみせる、と宣言したらしいわ」

「そ、総帥は、認めたんですか?」

ゴクリ、と息を呑む私の前で、ゆっくりと高橋さんの頭が横に振られた。

「実は総帥はこの件に全く関わってない、それどころか事件のこともクロードの存在も、それまでご存知なかったの。すべては総帥の知らないところで蠢いてた陰謀だった、というわけよ」

「ほんとに? 嘘ついてたんじゃないんですか?」

失礼かと思いつつ反論すると、苦笑が返って来た。

「クロードも最初は疑ったみたいね。だから総帥は、じゃあお前が気のすむまで調べてみればいい、っておっしゃってね。彼のために極秘の調査部署――SD(シークレットデパートメント)を作っちゃったの。リーダーはクロード。グループ内部をNGなく調べられる総帥特権を与えた上、メンバーの選定も彼に一任したわ」

水戸黄門の印籠を手に入れた感じかしらね、と高橋さんは笑う。
ちなみに、彼女もSDメンバーの一人で、バレンタインの夜の仕事、というのもSDのミーティングだったらしい。


「SDの調査で、日本に拠点を置くグループ会社――リーズメディカルとリーズニッポンの各社長に赤ん坊の行方を探すよう依頼した人物が誰かという謎は、割と早い段階で解けたわ」

「えぇっ!? だ誰だったんですか?」

李翠蘭(リー・スイラン)という女性よ」

わ、知らない人が出てきた。
高橋さんは私の反応を認めて、「知らなくて当然だわ」と肩をすくめた。

「ただグループ内部では超がつく有名人なの。先代総帥の正妻(・・)で、現総帥フレデリック様にとっては母親と呼ぶべき(・・・・)方だから。私も昔チラッとお会いしたことがあるけど、これがまぁ、ものすごくクセのある人でねー」

高橋さんによると、先代が亡くなるまで権勢を誇っていたその人は、華美を好み傲慢な性格で知られていたという。
悪女の代名詞とも言われた西太后(シータイホウ)になぞらえて、李太后(リータイホウ)と陰で呼ばれるほどだったとか。

< 298 / 402 >

この作品をシェア

pagetop