Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「私たちはずっと、彼女こそが黒幕だろうと考えていた。15年前の事件の前後で実際彼女は体調を崩していてね、パタリと赤ん坊の行方を探さなくなったのはそのせいだろうと思っていたの。実際、その部分はほぼほぼ正しかったらしいわ」
クロードさんたちは彼女の尻尾を掴むべく、証拠集めに奔走した。
何より優先させたのは、富田の行方を探すこと。
日本から彼を逃がした人物こそが、X=李翠蘭だと考えたから。
だが富田は拠点を定期的に変えて移動しているらしく、なかなか捕まらなかった。
そして月日は流れ――去年になってSDはようやく富田の居場所を探しあてた。
接触してみると、ちょうど彼の方も自分が騙されているんじゃないかと疑っていたところだったらしく、Xの存在をすんなり認めた。
残念ながらその正体は富田も知らなかったが、説得を重ねて、司法の場で証言することを約束させる。
順調にすべてが進んでいた――その矢先。
「富田が、殺されてしまったんですね?」
私が言うと、高橋さんは白い額に手をあてて苦々し気に頷いた。
「あれは本当に私たちのミスだったわ。警察に行く前に母親に会っておきたいと言われて……あと一歩のところでXに先を越された。最悪よ。あれで一気に、Xが警戒感を強めたのは間違いないわ」
そうか。
どうして15年も経ってからいろんなことが動き出したのか不思議だったけど、クロードさんやSDの地道な調査がようやく芽を吹いた結果だったんだ。
「でもそれではっきりした。翠蘭様はXではないって。なぜなら翠蘭様は今もう90近いご高齢で、しかも入院中なの。意識がはっきりしている日の方が珍しい、というくらいの状態なんですって」
「そんな状態で殺人の指示なんてできない、ってことですね」
「そういうこと。それに富田が漏らしたことで判明したのだけど、彼は逃走中にXの指示でプラゼットと呼ばれる犯罪組織に参加し、生活資金を得ていた。なんとXはプラゼットの創始者の一人であり、幹部だっていうのよ」
「90歳のお婆さんが、そんな犯罪組織に関われるわけ、ないですよね」
「えぇ、その通りよ。そこで、プラゼットが関わっていると見られる犯罪のデータを集めて、詳細に分析してみたの。そうしたら一つの仮説が見えてきた――彼らは、リーズグループを標的にして動いてるんじゃないか、って」
「標的? リーズグループを?」
「そう。直接的、間接的に、リーズグループの傘下、もしくは提携企業にダメージを与えるような攻撃を多く仕掛けていることがわかったのよ」