Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「それって……」
「なんとなく見えてくるでしょう? Xやプラゼットの行動から透けて見えるのは、リーズグループへの根深い恨み。ここからも、グループ内部で権勢を誇り、その繁栄の恩恵を受けてきた翠蘭様は無関係ってことがわかるわね」
あまりにも話が大きくなりすぎて、ついていくので精いっぱい。
息苦しささえ覚えた私は、胸元をぎゅっと掴んだ。
「そして、世界中から集められたプラゼットに関わる膨大な証拠、証言、リーズグループの過去、現在にわたる血縁関係、勢力図、すべてを加味して、私たちはついにXという人物にたどり着いた」
Xの正体――……彼は一体何者なの?
胸元をさらにきつく握り締め、高橋さんを凝視して答えを待つ――
「――とまぁ、わたしに話せるのはここらへんまでね」
「えぇっそんな……!」
コントみたいにがくっと肩が落ちちゃった。
「言ったでしょう、まだXの正体は明かせないの。すべてが終わるまではね」
そりゃ、言われたけど……ここまで話しておいて、それはないんじゃない?
クロードさんにも「今はこれ以上話せない」とか言われたっけ。
みんな秘密主義が過ぎるよ。
落胆の色を隠せない私へ、彼女は柔らかく微笑みかけた。
「まぁそれはそれとして。総帥特権があったとはいえ、クロードはほんとによくやったわ。すべてはあなたのため。あなたのお父様を殺した真犯人を捕まえる、その一念だったのよ。もはや執念ね。どう? 惚れ直したんじゃない?」
「はい……え、いいえっ」
「えぇ? どっちよー」
揶揄うようにニマニマぬるい笑顔で見てくる彼女に、私は口ごもる。
「あの、だって、惚れる、なんて……言っちゃいけないじゃないですか。好きになっちゃいけない相手なんだから」
「あらぁ、どうして? わたしとクロードは別に恋人でもなんでもないって、説明したわよね? あぁ、もしかしてあの時の会話かしら? “離婚前提の結婚”って言ってたのが引っかかってるの?」
「そう、ですね。だってもともと結婚できるような関係じゃないんだし……兄妹なんて」
視線を落として、つぶやくように言うと――かなり長く、沈黙が続いた。
「は…………兄妹? 誰と誰が?」