Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

結局、香ちゃんたちは“バラバラの方向だから”と自宅まで送るというクロードさんの申し出を固辞。
近くの駅に2人を降ろした後、私たちは自宅へ戻って来た。

ターミナル駅にもほど近いその場所でひと際目立つ、高層のマンション。
いわゆるタワマンというものに、私はクロードさんとの結婚が決まってから、人生で初めて足を踏み入れた。

どこぞの迎賓館か五つ星ホテルかってくらい、吹き抜けの高い天井から下がるシャンデリアは煌びやかで、待合スペースのソファセットはハイセンスで、エントランスだけで腰を抜かしそうになったなぁ。

もちろん内部には居住スペースのほか、各種施設――スーパー、カフェやスポーツジム、コワーキングスペースやシアタールームまで――も完備。
こういうマンションでは当たり前のことらしいけど、私にとってはすべてが初体験。最初のガイドツアーでは迷子になっちゃって、彼に笑われてしまったのよね。


「ベッカー様、お帰りなさいませ」

「た、ただいま、です」

ホテルのフロントデスクみたいに恭しく出迎えてくれるコンシェルジュさんにたどたどしく挨拶して(←小心者)、高層階専用の高速エレベーターへ。

居住スペースの最高階で降りる(最上階はレストラン)。
その先に、ドアは一つだけ。
そう、実はなんとこのワンフロアすべてが、クロードさんの持ち物だったりする。

30代でこんなすごい所を購入してしまうなんて……一体何者なんだ、って感じよね?

――投資家っていう職業もさ、なんか胡散臭そうって。ごめんね茉莉花ちゃん、いろいろ言っちゃって。

――旦那さんすごいよ。相当稼いでる。


彼から聞かされているのは、投資の会社を経営してるってことだけ。
正直どんなことをしてるのか、さっぱりわからない。

胡散臭い、とまでは思わないものの、投資っていうものにギャンブル的なイメージしか持ってなかった私には、未知の世界なんだよね。

前にちょっと説明してもらった時は、ヘッジファンドやらインデックスファンドやら、ちんぷんかんぷんな専門用語ばかりで、早々にギブアップしちゃって。
もっと勉強しないといけないなと思ってる。

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