Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ようやく返って来た言葉に滲んでいたのは困惑の色。
私は恐る恐る再び、顔を持ち上げた。
「私と、クロードさんが、です。クロードさんの両親は、総帥のお嬢さんとうちの父、なんでしょう?」
言い終わるなり、高橋さんがぐわっと目を極限まで見開き、今度こそソファの上で文字通り飛び上がった。
「えぇええええ? 違う違う違う!」
思いっきり首と両手を人形みたいにぶるぶる振られて、あっけにとられる。
ち、違う??
「どこをどう勘違いして……ええと、クロードの父親は、あなたのお父様じゃないわ。あなたたち、全然血の繋がりなんてないから!」
血のつながりが、ない?
え? え??
それって、それって、どういうこと……?
「あぁ、なるほど。美里さんのことを総帥の娘だって考えたわけね? 総帥は独身よ。隠し子の類も、一切いらっしゃらないわ」
「み、美里さん?」
「楠本美里さん。クロードの母親ね」
あぁ、あの写真の女性……
「でも、桜木さん――その楠本さんを受け持った病院の看護師さんが、うちの父が父親だと……」
「あぁそういうことか。彼女も勘違いしたのね。他に付き添いの男性がいなかったせいで。ええと、これは想像だけど、一人きりの出産が心細くて、美里さんがお父様に頼んだんじゃないかしら。傍にいて欲しいって。あるいは、お父様の方から申し出たのかもしれないけど。2人は幼馴染だったらしいから」
「幼馴染……夫婦、じゃ、ない?」
呆然とつぶやく私に、「えぇ、そうよ」と高橋さんは力強く首を縦にする。
「N市で生まれた美里さんは音大を卒業後、ラウンジピアニストとして世界各地のリゾートホテルで演奏しながら生計を立てていたの。そしてシンガポールに滞在していた時、ある男性と出会った。この人物が、クロードの父親。彼には妻子がいてね、つまり2人は不倫の関係だったのよ。身分の違いを気にして、やがて彼女は別れを選択し、帰国する。でもその時にはもう、お腹にクロードが宿っていた」
頭が、それまで以上の大混乱で真っ白。
言葉がなかなか出てこない。
N市は確かに、お父さんの出身地だ。
ええと、ええと、つまり、どういうこと?
美里さんの方は、リーズグループに全然関係ない人、ってことだよね?
じゃあ、父親の方が……
「はっまさかクロードさんの父親って、総帥? あれ、ええと、でも総帥は独身で、隠し子はいない、っておっしゃってましたよね、すみません、頭の中ぐちゃぐちゃで……」
「気にしないで。仕方ないわ、複雑だもの。じゃあヒントをあげるわね。クロードは現総帥の息子ではない。ただ、過去のどこかで、何かが違っていたら……今、リーズグループの総帥と呼ばれていたのは、クロードだったかもしれない」