Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
ん? 今、何か外の方から叫び声が聞こえたような……
気のせい?
『明良様っ! ぐぁああああっ!』
次の野太い悲鳴は、和室にいる私たちにもはっきり届いた。
さっき出て行った男の声だろうか。
え、何が起こったの?
「どうした? おい、返事しろ! 何があった!」
香坂が叫ぶ。
返事はない――……
次の瞬間。
「ぎゃああああっ」
再びの叫び声とともに、庭に面した障子をなぎ倒すように突き破って、誰かが和室へと倒れ込んで来た。
「ひっ」
思わず悲鳴を上げそうになって、両手で口を押さえた。
香坂の仲間だろう。
さっきの黒スーツの男と同じような格好の男が、すっかり意識を失ってのびている。
「な、んっ……」
絶句した香坂、そして私は、庭へと視線を移した。
誰もいないそこを和室からの光がほの明るく照らし出す。
まるで開演前の舞台のようだと、頭のどこかで場違いなことを考える。
何かが始まる予感に、鼓動が訳もなく乱れた。
そしてその予感は、正しかった。
ザク、ザク、と庭の砂を踏む革靴が現れる。
スラックス、ジャケット、と光の輪へ次第にその姿が大きく露わになっていき……ついに均整のとれた逞しい全身が現れた、その人は――