Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
――こ、ここで学くんと会ったのは偶然なんですっ。彼は、たまたまここで学会の発表があったみたいで。私は、こっちの大広間のリーズグループのパーティーでバイトをっですね。
一生懸命言い訳する彼女が、憎らしかった。
そもそもバイトをするなんて――しかもリーズグループの関連企業で――聞いてない。
それがどれほど危険な行為か……詰りたい気持ちをぐっと堪える。
もちろん彼女は何も知らないわけだし、仕方ないのだ。
放っておいた自分を棚に上げ、随分不愛想に振舞ったのを覚えてる。
――ホテル側には俺が言っておいてやる。今すぐ、このままタクシーで帰れ。
彼女の安全のため。
けれど本音は、彼女と藤堂をこれ以上一緒にいさせたくなかったから。
呆れた独占欲だ。
――私はあなたのお人形じゃないっ。どうしちゃったの、クロードさん。なんかおかしいですよ?
――クロード! 何かトラブル? 総帥があなたのこと呼んでらっしゃるけど。
ユキが呼びに来てくれなければ、茉莉花にもっと嫌われてしまうようなことをしでかすところだった。
駆けていく後ろ姿を追いかける資格は、俺にはない。
彼女には裏方の仕事のみをさせるようフロアのマネージャーへ伝言してから、必死に思考を切り替え、総帥が待つ部屋へと向かったのだった。
――王明、という男を知っているか。
プレジデンシャルスイートで待っていた総帥は、開口一番そう言った。
――ワンミン、ですか。確か、李宇航の元妻の子、ですよね。
総帥から以前聞いたことがある。
政略結婚で宇航に嫁いだ女は、浪費家の上に男好き。到底大人しく家庭に収まるわけもなく、複数の男を作って遊んでいたそうだ。
やがて男児を生んだが、疑問を持った宇航はこっそりDNA鑑定を行い、父子関係はないという証拠を掴んでいた。
その後俺の実母・楠本美里と出会った宇航は、離婚を決意。証拠を突き付けて、男児ともども実家へ戻るよう約束させた――
そんな事情を思い返していると、総帥がもう一度口を開いた。
――会場で、似た男をみかけた。
――えぇええっ!?
後ろから大声で叫んだのはユキだ。
――どういうことですかっ、王明は上海にいるはずじゃ……