Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
この後の2人の関係について、俺たちはまだ何も話し合っていない。
常識で考えるなら、離婚の話が出て、離婚協議書まで用意したからには――破られてしまったとはいえ――、離婚するのが正しいんだろう。
彼女が今俺の傍にいてくれるのは、俺が彼女を庇って負傷したからだし。
退院したら、別々の道を行くべきだ。
別々の街、別々の環境、別々の人生、二度と交わることのない……
はぁ、とため息をこぼして箸を置いたところで、ん? と気づき、「茉莉花、ココ、ついてる」と、口元についたご飯粒を教えてやる。
茉莉花は「すみません」と慌てたように言ってそれを指先に取り、口の中へ――濡れた赤い舌がちらりと見え、ドクンと鼓動が跳ねた。
体内の一点へ、否応なく熱が集まっていく。
「え、あ、お行儀悪かった、ですよね――、きゃっ」
照れ笑いする彼女の細い手首をたまらず掴んで引き寄せ、至近距離で見つめ合う。
「クロード、さ……?」
君は知らないだろう。
今俺の頭の中で、自分がどれほど淫らな格好をさせられているか。
驚いて丸くなった彼女の瞳。
誘うように、期待するように揺れて見えるのは、俺の願望に違いない。
「…………」
もう自分でもどうしたらいいのかわからない。
慎重に慎重に、離婚へ向けて気持ちを固めてきたはずなのに、君はあっさりそれを飛び越えて、俺の心の中に再び居座ってしまった。
すべてが欲しいと、奪ってしまえと、獣のような欲望が体内で暴れている。
彼女が抵抗しないのをいいことに、俺は無意識にさらに彼女を引き寄せていた。
ゆっくりと、2人の瞼が下りていく――