Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「あぁ、ちょっと売店に行ってる」

「なぁんだ、つまんないなぁ」

大げさにため息をついた藤堂は、それでもテキパキと俺の傷を確認すると、新たな処置を済ませて頷いた。

「この調子なら、あと1か月くらいで退院できそうだ」

「そうか……」
あと1か月――物思いに沈みかけた俺の耳に、ムッとした声が届く。

「そうか、ってそれだけ? もうちょっとこう、何かないのか? 命の恩人の天才ドクターに対してさ」

「……ありがとうゴザイマシタ」
「テキトーかっ」

ずっと疑問だった。
どうしてあの場に、藤堂が駆けつけることができたのか。

後から聞くと、キーマンは香坂の恋人・佐久間さんだった。

彼女は香坂の過去を、何も知らなかったそうだ。
罪の意識もないまま、世間話の感覚で恋人に乞われるまま情報を伝えていて……ただ最後に、ブルームーンで茉莉花たちと話し合った内容を伝えた際、香坂の様子がいつもと違ったらしい(おそらく異母弟の正体が俺であると確信して、喜びを隠しきれなかったんだろう)。

何かがおかしいと問い詰めた結果、恋人から自慢げに正体を明かされ、茉莉花や俺をおびき出す計画まで教えられた。
自分が殺人犯と付き合っていたのだと知り、彼女のショックはどれほどだったか……想像に難くない。

その後監禁された佐久間さんだが、監視の目を誤魔化して藤堂の妹へ連絡を取ることに成功。茉莉花に迫る危険を伝えた。
藤堂妹はちょうど一緒にいた兄、つまり藤堂へ相談。彼はすぐに現場へ向かうことにした、ということのようだ。

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