Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「……りか、茉莉花?」
「へっ!?」
ハッと顔を上げると、向かい側の席からクロードさんが「どうした?」と首を傾げているのが見えた。
ぼんやりしていた自分を誤魔化すように、目の前のお肉をそそくさとナイフで切り分ける。
「えーと、……ちょ、ちょっとなんか落ち着かなくて……」
これは本当だ。
何しろ、貸切りなんだから当然とはいえ、こんなオーシャンビューの素敵なレストランに――海の上にいるんだからこれも当たり前だけど――見渡す限りゲストは私たちだけなんだもの!
しかもすべて通常営業と同じにしているらしく、バンドの生演奏まで流れてくる。貧乏くさいかもしれないが申し訳なくて。
「個室だと思えばいいだろ」
「あはは……」
いや、個室って、広すぎでしょ!
心の中でツッコみながら、一口大にしたお肉をパクリ。
「わ、柔らかっ! 美味しいですっ」
「そうか、よかった」
うっとりするくらい美しい微笑みを浮かべたクロードさんは、優雅な仕草でグラスを傾け、赤ワインを味わっている。
ドラマのワンシーンみたいなその絵にうっかり見惚れそうになって、慌てて視線を逸らした。
ダメだ、どこもかしこも色っぽすぎる!
再び料理の味もわからないくらい、煩悩塗れになってる自分にうんざりする。
日が暮れてから、ずっとこの調子なのよ……。
原因はわかってる。
この後に控えるであろうイベントを前にして、緊張がマックスだから!
たぶん、おそらく、今夜こそは、そういうことになるよね?