Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「彼は俺たちと一緒に、シンガポールへ行くんだ。今後は俺の元で、SDの手足として働いてもらう」
クロードさんのフォローに、私は目を剥く。
そりゃ、彼がもともとクロードさんの指示でブルームーンで働いてたってことは、聞いてる。けど……
「じゃあ帰国っていうのは、嘘?」
香ちゃん、あんなに落ち込んでたのに……
言外の非難を感じ取ったのか、トミーはその視線をわずかに伏せた。
「オレはキングに……クロード様に拾っていただくまで、危ない橋をいくつも渡るような、ろくでもない生活をしていました。そんなオレに、彼女のような素晴らしい女性はもったいない。彼女にはもっと普通の、穏やかな幸せを掴んで欲しいんです」
「そんな……」
香ちゃんの幸せは香ちゃん自身が決めることだよ、と言いたかったのに、彼の決然とした表情を見てしまったら何も言えなくなって。
「お注ぎしますね」
静かな声がしてグラスへ赤ワインが注がれ、恭しくお辞儀した彼が下がっていく姿を、ただ無言で見送るしかなかった。
「相応のポストを用意するから日本に留まるかと提案もしたんだが、断られた。よっぽど彼女の傍にいるのが辛いらしいな。あんな風に女から逃げ出すあいつは、初めて見たよ」
そう言うクロードさんは、なんだか面白がってるような?
「クロードさん? ……何か、企んでます?」
「企む?」
ワインを軽く吹き出しそうになりながら、クロードさんはついに声に出して笑い始めた。
「まさか。そんなことは考えてない。ただ、2人が運命で結ばれているなら、きっといつかまた巡り合う日が来る、と思ってるだけだ。外野がどうこうしなくてもな」
「俺たちのように」とさりげなく加えられた一言に、ドキッと胸が跳ねた。