Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「ひ、しょ……?」
「表の総帥補佐と、裏のSD、2つの仕事を円滑に進めていくためには、どうしてもスケジュール調整や各部署との連絡を引き受けてくれる専属秘書が必要なんだ。グループの裏側まで関わらせるわけだから、相当信頼できる相手でなければならないし――」
「はいっやりますっ! やらせてくださいっ!!」
片手を高く挙げ、勢い込んで立候補。
また速水さんみたいな美女が彼に近づいて嫉妬に苦しむくらいなら、いっそ自分が秘書になった方がいい。
経験はないし、いろいろ大変だろうけど、これから勉強すればいいんだもの。
大丈夫、きっとできる――なんて、こちらの考えは全部お見通しなのか、鼻息荒く前のめりになる私を見て、クロードさんは可笑しそうに肩を揺らした。
「じゃあお願いしよう。俺の妻兼秘書さん。よろしく頼む」
差し出されたグラスへ、自分のグラスをカチンと合わせる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
妻、兼秘書、かぁ。
こんな色気駄々洩れな美形が四六時中傍にいて、仕事にちゃんと集中できるかな。
公私混同しないように、頑張れるかな?
ワインをちびちび味わいながら、わずかな不安が沸く。
まぁ大丈夫か。
彼の方は公私混同なんて、無縁そうだしな。
今だって、この後のことを考えて心臓が口から飛び出しそうな私と違って、至って通常運転だしさ……。
再び美しい所作でお肉へナイフを入れていく彼をチラ見て、こっそり息を吐き出す。
これじゃ、私ばっかりがっついてるみたいじゃない。
胸の内で独り言ちた私は、ため息交じりにゆらゆらとグラスを回し――だから気づかなかった。彼の瞳の奥に揺らめく、仄暗い炎に。