Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「私に男性経験がないって、最初からご存知だったんですか?」

「ん? あぁ、まぁ、な」

なんか歯切れの悪い返事。
むむ、と眉間に皺が寄った。

男馴れしてない態度から気づいた、ってこともあるかもしれないが、この彼の気まずそうな様子から察するに……

「私の恋愛事情までチェックしてたんですか?」

若干呆れた声を上げると、ぐ、と後ろから息を呑む音。

定期的に私のこと調べさせて、隠し撮り写真まで彼は持ってたっていうから、きっと彼氏がいないことも筒抜けだったのね。

「……すまない。茉莉花に悪い虫がつくようなことがあったら、先生に申し訳なくて――いや、違うな」

ふいに、うなじへ濡れた舌を感じて、ビクッと肩が跳ねた。
「クロード、さんっ」

「それはタテマエで、俺が、知りたかった。君が、まだ誰のものでもないと知って、安心したかったんだ」

許しを乞うようにうなじから首筋、頬を軽く啄んで。
身体をずらして私の頬へ大きな手を添え、間近に見つめてくる。

「すまない。許してくれるか?」

殊勝な台詞を甘い声音で言いながら、その手で私の頬を、耳をくすぐるように撫でていく。

ずるい人。
私の返事なんて、知ってるくせに。

「茉莉花?」

数センチの距離で寸止めされた唇のせいだろうか。
ジリジリと身体の奥が疼くような心地がして、これじゃ彼の思うつぼだと、こっそり熱い息を吐き出して視線を逸らした。

そして彼の手を取り、自分の手を重ね合わせる。

「許してあげます。だって、そのおかげで私は守られていたんだもの。15年前からずっと」

骨ばった大きな手をそっと撫で、指先を自分のそれと絡ませた。

「この手が、救ってくれた」

火事の中から。
悪夢の中から――

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