Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
それに……うちは姉弟2人暮らし。
柊馬はまだ大学生で、学費も必要になる。
親戚と言えば、年金で暮らす母方のおばあちゃんだけ。
もちろん頼れるわけもない。
つまり、私のお給料だけが頼みの綱。
クビなんてことになったら。
短大卒で特別な資格も経験もない私に、一体どんな仕事が見つかる?
もっと可愛くてお酒も強かったら、夜のお仕事だってできただろうけど……私じゃ無理だろう。
だから、今会社を辞めるわけにはいかない。
沈黙する私を見下ろしたその人の、愉快そうに歪んだ唇は、たぶん一生忘れないと思う。
それからは、セクハラよりもパワハラがメインになった。
――は? まだできてない? よくそんなんで給料もらえるなァ!
大量の仕事に、容赦ない叱責。
メンタルもフィジカルもゴリゴリ削られる日々。
周囲は火の粉が降りかかるのを恐れているのか、誰も助けてくれないし。それどころか同僚の女子たちは、課長に恩を売りたいのか知らないが、全員が私の敵に回ることに決めたようだった。
――課長ぉまた宮原さん給湯室でサボってましたよー。
あなたが掃除しとけって言ったんでしょう!?
叫びたいのを、なんとか堪えた。
それほど大きな会社じゃなく、少ない同期は大卒の子ばかり。
人見知りな性格もあって、もともとあまり交流がなかったことも災いした。
誰も味方してくれなかったし、相談する相手もいなかったのだ。
それでもどうにかこうにか、一日一日、生き延びてきたわけだけど……
最近、パワハラにもそろそろ飽きてきたのか、セクハラが再開。
「仕事のコツを教えてやる」と課長からしつこく飲みに誘われるようになった。
そのたびに用事を作って誤魔化して、BlueMoonに駆け込んで。
柊馬のバイトが終わるのを待ち、一緒に帰った。
でもとうとう今日……
――いい加減にしろよ。オレが誘ってやってるんだ、ありがたく着いてくればいいんだよ!
会社の裏からこっそり出ようとしたところを待ち伏せされてしまった。
腕を掴まれて震えあがった私は、無我夢中で振り払って逃げて……