Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
「どうしよう月曜日……会社行きたくない」
テキパキテーブル席の間を行き来する柊馬を、力なく振り返る。
ダメダメ、弱気になっちゃ。
せめて柊馬が大学を卒業して独り立ちするまで。
それまではどんなに辛くてもがんばらないと……
お父さんとお母さんだって、それを望んでるはずだ。
遠い昔――4人で過ごした楽しかった日々が蘇ってジワリと視界が滲んでしまい、慌てて瞬きを繰り返した。
と、そこへ。
「どうぞ」
落ち着いた声が聞こえて視線を上げれば、ラベンダー色のカクテルが目の前に。
「え、マスター?」
カウンターの向こうにいたのは、ラフなTシャツ姿の男性だった。
“マスター”と呼ぶのが躊躇われる、おそらくまだ30代半ばくらいの彼は、さっきまでピアノを弾いていた人で、竹中流さん。このバーのオーナーでもある。
「私まだ何も注文してないんですけど……」
首を傾げる私に、彫の深い顔立ちが綻ぶ。
「これは僕の奢り。いつも柊馬には頑張ってもらってるからね」
「え、いいんですか?」
「もちろん」
「わ、ありがとうございます、嬉しいっ」
お礼を言ってから、エレガントな雰囲気のそのカクテルグラスへと再び目を向けた。
「すっごく綺麗ですね。なんていう名前のカクテルですか?」
「ブルームーンだよ」