Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~
へぇこれが、と目を開く。
「聞いたことはあるけど飲むのは初めてです。あ、お店の名前ってこのカクテルから?」
私が聞くと、流さんは笑いながら首を振った。
「え、違うんですか?」
「うん、まぁね。ええと、茉莉花ちゃんは英語詳しかったっけ。じゃあ、“once in a blue moon”っていう慣用句は知ってる?」
もちろん知ってる、と私は頷いた。
「めったにない、奇跡のような、とかいう意味ですよね?」
すごく詩的で印象的な言葉だし、一度聞いたら忘れられない。
語源については、空中の塵のせいでごくたまに月が青く見える時があるからとか、いくつか説があるらしい。まぁとにかく、“ブルームーンくらい珍しい”って感じで使うのよね。
「うん、そうそうそれ。いつの間にかブルームーンが看板商品みたいになっちゃって。“完全なる愛”やら“叶わぬ恋”やら、カクテル言葉にかけたんじゃないかってよくお客さんから聞かれるけど、僕が店名に込めた気持ちは、その慣用句の意味の方だよ。この店で、二度とない奇跡のような時間を過ごしてもらえたら、ってね」
二度とない、奇跡のような時間……
「うわぁ、ロマンチックですね」
「あはは、ありがとう。茉莉花ちゃんの人生にも、奇跡が訪れますように。さ、どうぞゆっくり楽しんで」
悪戯っぽくウィンクして、別のお客さんの元へと去っていく流さん。
えっと……千里眼か何か、特殊能力があるわけじゃないよね?
なんだか私の窮状、見通されてる気がするような……。
「……まさかね」
肩をすくめ、グラスへと手を伸ばした。
少し揺らすと、ライトを反射して水面がキラキラと輝く。
めちゃくちゃキレイ……