Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

「え……」

どうして?
そういうのが嫌いっていうだけじゃないの?

「マスコミは必ず、社長の私生活、特にパートナーについて聞きたがるからです。ふさわしい妻がいなければ、アピールしづらいでしょう?」

嘘、私のせい?
私がクロードさんの足を引っ張っているの?

そんな……
私……私は、どうしたら……

混乱する思考回路のまま、早くこの場から逃げたい、と思わずエレベーターホールの方をチラ見してしまったけど――「あぁそれから奥様」という言葉で仕方なく視線を戻した。

「ちょうどいい機会なので、お伝えしておきますね。私、婚約破棄したんです」

「……は?」

ぽかんと口を開けた私を見つめ、子どもに言い含めるようにゆっくりと、彼女は言葉を繋ぐ。

「私が社長と出会った時、私にはすでに婚約者がおりました。ですから彼も、私を諦めざるを得なかったんですわ。私に惹かれていながら、どうしようもなかった」

「な、に言っ……」

何を言ってるんだろう、この人は。
何を勝手な……

唖然として言葉を失う私へ、彼女はぐいっと身をかがめ、顔を近づけてきた。
ふわりと、華やかな香りが鼻孔をくすぐる。

「初対面の時を思い出しますわ。彼、こんな風に私に近づいて、『君はいい匂いがするね』っておっしゃったんです。いい匂いがすると感じる相手って、遺伝子レベルで相性がいいんですって。私たち、すぐにお互いが運命の相手だってわかったんです」

「……運命の、相手?」

空調は効いてるはずなのに、ひどく寒い。
そして、喉がカラカラに乾いていた。


「家政婦として利用されてるだけだってさっさと気づきなさい。そして一日も早く、彼を解放してあげて」


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