Once in a Blue Moon ~ 冷酷暴君の不可解なる寵愛 ~

気が付くと、店内に再びざわめきが戻ってる。
私同様固唾を飲んで見守っていたお客さんたちが、会話を再開したようだ。

ホッと息を吐いた私は一番近くにいたこともあって知らんぷりもできず、男性へとおそるおそる視線を向けた。

「あの、大丈夫、ですか?」

「あぁ。問題ない」

淡々と言いながら立ち上がったその人は、濡れたらしい黒のジャケットを脱ぐ。
下のシャツも黒で、シックなシルエットがよく似合っていた。

「お預かりしましょう。応急的にシミ抜きしておきますよ」
「すまないな。助かるよ」

手にしたそれをスタッフへ渡してから、グレーのネクタイを片手で無造作に緩める。めちゃくちゃ身長が高くてガタイがいいせいか、さりげない仕草も妙にサマになってて。
なんかスポーツでもやってそうだな、となんとなく目を離せずにいたら、視線に気づいたのか、彼がこちらを振り返り、まともに視線が絡んだ。

「え」

無意識に、間抜けなつぶやきがこぼれちゃった。

いや、だって……何、どこの異世界から飛ばされてきたの、このイケメンはっ!? って叫びたいくらい、カッコいい人だったから。

年齢は30代前半、くらい?

緩やかに吊り上がった瞳は、知性と華やかさが同居した奥二重。

外国人みたいにくっきり通った鼻筋、肉感的な唇も色っぽいし、広い肩幅からもわかる筋肉質な体躯も相まって、全身から野性的な魅力が溢れていて……

でも粗野な印象はないの。
清潔感あるツーブロックスタイルの黒髪や、一目で上質とわかるスーツ姿が彼に馴染んでいるせいかな。

一言でいうなら、ザ・洗練された大人の男性。

今まで、学くん以上のイケメンなんてこの世に存在しないと思ってたのに。
世界はなんて広いんだろう。

そりゃこんな美形なら、どんな美女でもとっかえひっかえつまみ食いできようというものだわ。

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