月ノ蝶、赤縄を結ぶ
 それよりも「アイツら」という言葉が気になる。



「人相が悪そうな連中だよ。タバコのポイ捨てはダメって注意したら逆ギレしてきたクソ野郎!」

「ね、姉ちゃん!そんなこと言ってアイツらが帰ってきたら・・・!」



 女の子の声を遮るように男の子が喋りだした。どうやら2人いたらしい。

 この状況に耐えかねたのか、遂に男の子が泣き始めてしまった。



「もうやだぁ。いつまでこんなのとこに居なきゃいけないの!?姉ちゃんが声なんてかけてなきゃ今頃夜ご飯食べれてたのに!!」

「うるさい!悪いのは全部私じゃなくてアイツらじゃん!アイツらが・・・っ、ママぁ・・・・・・」



 女の子もつられたように泣き出してしまった。

 それとは対照的に、私は落ち着きを取り戻した。

 ここにいるのが私だけじゃないって分かったからだ。



 私にとって一番の恐怖は独りで居続けることなのだから。



 ────茜。



 瞳を閉じれば紅くんのことが鮮明に思い浮かぶ。
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