トツキトオカの切愛夫婦事情 ―Special episode―
 箱には有名なジュエリーブランドのロゴが入っている。そういえばついこの間、会社のメイクルームで……。

『昨日、瀬在さんがネックレス買ってるところを見たの! あれって彼女にかな?』
『え~絶対そうでしょ! うらやましい~』

 たまたま女性社員が興奮気味に話すのを聞いてしまったのだが、あの時彼女たちはこのブランドの名前を口にしていた。

 瀬在さんを頼りにしたということは、もしかして彼が代わりに用意したの? いやでも、中身は別のものかもしれないし……。

 胸をざわめかせつつ、「見てもいいですか?」と確認してリボンを解く。ゆっくり蓋を開けると、上品な涙型の宝石のネックレスが露わになった。

 ああ、やっぱり……慧さんが自分で選んだものじゃないんだ。

 プレゼントを贈ろうとしてくれたその気持ちは嬉しいし、感謝もしている。なのに、物足りなさを感じてしまう私は贅沢だろうか。

 表情が暗くなっていたのか、慧さんは少し不安げに私の顔を覗き込んでくる。

「……気に入らないか?」
「あ、いえ! すごく素敵です。ありがとうございます」

 無理やり口角を上げてお礼を言ったものの、いびつな笑顔になっていたに違いない。

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