断罪されて死に戻ったけど、私は絶対悪くない!
「でもそんなに可愛らしい叫び声だったのなら、少し聞いてみたい気もいたしますわね」

 なんて、意地悪いことを思った私がくすりと笑いながらそう言うと、その言葉で何かに気付いたアレス様がそっと私の耳元へと顔を近付けて。

「その事件があったのはビビが俺の上で可愛らしい声を上げていた時間だな」
「ッ!?」

 吐息混じりにそんなことを告げられ、一気に顔が熱くなる。

“そ、そうだったわ、その日って私がはじめてアレス様に抱かれた――……!”

 いくら私を嵌めようとした相手だとしても、この国の手本として清く気高くなくてはならない私が意地悪なことを考えた罰なのか。

 囁かれたその言葉に冷や汗が滲む。
 
 小声とはいえ、今まさにお忍びデートで新作スイーツを食べるために行列へ並んでいるのだ。
 隣との距離は想定よりずっとずっと近くて。

「いや、もしかしたら俺の下で胸元まで赤く染めながらよがっていた時間だったか……?」
「ふ、不適切ですわッ!」

 流石にこのままではいつか聞かれてしまう! と焦った私は、その勢いのままアレス様の口を手のひらでむぎゅっと強制的に塞ぐ。

 私のその行動に驚いたのか、一瞬その赤い瞳を見開いたアレス様は、けれどすぐにニヤッと細めて。


「ひ、ひゃぁ……っ!?」

 ぺろ、と手のひらを舐められビクリと肩が跳ねた。

「なっ、なっ」
「愛おしい君だからね、甘いかと思ったんだけど」

 慌ててアレス様の唇から両手を離し、隠すように両手を自身の後ろへと回す。
 焦っている私が面白いのか、柔らかい表情で私を見つめたアレス様は、再びそっと私の耳元へと顔を寄せて。

「……甘いのは、もう少し後でだね?」
「なッ!」

『噂に聞くように体液が甘く感じる訳ではないんだな』

 彼の言葉で、あのはじめての時に言われた言葉を連想した私は、周りに人がいるということすら頭から転がり落ちてしまって。

「でっ、ですからそういうのはフィクションなんですッ!!」

 あっと思った時にはもう遅く、気付けばそんなことを叫んでしまっていた。
 周りからの視線が痛い。

“や、やってしまったわ……”

 確実に真っ赤になっているだろう顔を少しでも隠したくてその場で思わず俯いてしまう。
 けれどそんな私にはお構い無しで、ずっとくすくす笑っているアレス様はごく当たり前のように、むしろどこか胸を張る勢いで口を開いた。
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