《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「亜夢ちゃん、今日は買い物に付き合ってくれてありがとうね」
「いえ、私で良ければいつでも言ってください」
「嬉しいわぁ。私ね、こうして娘と買い物に来るのって憧れだったの。でもうちは百瀬だけだったでしょ? だから亜夢ちゃんが付き合ってくれて嬉しいのよ」
「そう言ってもらえると私も嬉しいです」

 お義母さんとの仲は良好で、本当の娘のように可愛がってくれるからこうして一緒に居るのも苦ではない。

 世間での嫁姑問題は色々大変そうだけど、私たちには縁遠い話だなと思っている。

 買い物を終えて百瀬くんの実家に戻って来た私はショッピングモールで買って来たケーキを食べながらお義母さんやお義父さんと百瀬くんや神楽が戻ってくるのを待っていた。

 そして、時刻が午後五時半を過ぎた頃、

「お邪魔しました」
「それじゃあまた来るよ」
「じーじ、ばーば、バイバイ!」

 外出先から戻って来た百瀬くんと神楽は部屋に上がる事なく、玄関先での挨拶を済ませるだけで帰る事に。

「今日は何処に遊びに行ったの?」

 帰りの車内で今日はどこに行っていたのか神楽に尋ねると、

「えっとねー……いろいろ!」

 何故か言葉を濁し、どこへ行ったのかを答えない神楽。

 いつもなら自ら色々話してくれるのに、今日は何故か話したがらず、どこか困ったような表情を浮かべている。

 何かあったのかと思い、聞くべきか迷ったものの、話したがらない事を無理に聞くのは違うかなと聞くのを止めて、別の話題に切り替えた。

 何だかモヤモヤが残るまま自宅に着くと百瀬くんが、

「亜夢、悪いんだけど、ここで少しだけ待っててくれる?」

 そんな事を言ってきた。

「え? あ、うん。それは構わないけど……何かあったの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけど、ちょっとね」

 妙に落ち着きの無い神楽と、何かを隠しているような百瀬くん。

 車から降りずにここで待つよう言われた私は不思議に思いながらも素直にそれに従うと、百瀬くんと神楽だけ車から降りて家へと入って行ってしまった。
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