《短編集》愛しの旦那様は今日も私を溺愛する
「ママ、ごめんなさい、ほうちょう……パパにかってもらって……」

 神楽は私が包丁を買わずにいたのに百瀬くんに買ってもらった事を謝ってくる。

「ううん、いいんだよ。ママの方こそ、買わないでいてごめんね。神楽はお手伝いしたかったんだよね? 今度はママと一緒に料理しようね」
「うん!」

 心配なのは変わらないけれど、危険な事、大人と一緒の時しか使ってはいけない事を徹底すれば良い、少しでも神楽の成長に繋がるなら何でも挑戦させてみるべきだという事が改めて分かった私も神楽に謝罪をして、今度は一緒に料理をしようねと言った。

 カレーを食べ終え、三人で一緒に後片付けを終えると、百瀬くんと神楽に再び席に着くよう促される。

「どうしたの?」
「いーの! ここでまってて!」

 何があるのか見当がつかない私は首を傾げつつ二人の向かう先を目で追っていくと、二人は冷蔵庫の前で止まって百瀬くんが扉を開ける。

 そして、神楽を抱き上げて何かを取らせると、神楽が手にしたのは白い箱だった。

「ママ、これもどーぞ!」

 百瀬くんに降ろしてもらった神楽は一目散に私の元へ駆けてくると、私に持っていた箱を差し出してくる。

「くれるの?」
「うん! あけてみて!」

 箱を受け取った私はテーブルの上で箱を開けると――中にはケーキが入っていたのだ。

「え? ケーキまで?」
「うん!」

 しかもケーキは買った物ではなく、手作りのもの。

「ケーキも、パパと作ってくれたの?」
「うん! パパがクリームつけて、オレがイチゴならべたの!」

 そう神楽が一生懸命説明をしてくれる中、

「神楽がケーキも作りたいって言ったけど、流石にスポンジは無理だから市販のやつだけどね。神楽、ママに紅茶淹れてあげるんだろ? お湯沸いたから準備しよう」

 百瀬くんが私たちの元へ来て、補足をしてくれた。

 それから神楽と百瀬くんが飲み物まで用意してくれるという徹底ぶり。

 こんなに沢山お返しをしてもらえるなんて思ってもみなかった私は感動で胸がいっぱいだった。
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