クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
そして私を後部座席に誘導し、安井さんの優しい雰囲気に合わない「荒っぽい運転」で車は走り出す。
「さて、事は急を要します。珍しく響希様がヘマをされたので、少々急ぎますよ」
「〝ヘマ〟?」
「響希様のピンチ、と言えばよろしいでしょうか」
「え!」
先輩のピンチ……って。
時山先輩の家で、何があったの⁉
「せ、先輩は大丈夫なんですかっ?」
「響希様もバカではありませんから、万が一の事を思って私に連絡していたのですよ」
〝これから時山家に行く。指定の時間になっても俺から連絡無ければ、直ぐ来るように。あ、あと――〟
「〝マンションの近くでネコが泣いてるだろうから拾って来て〟とも」
「泣いてるネコ?」
「ふふ。試しに〝にゃあ〟と泣いてみますか?」
「!」
ネコって私のことなんだ!
しかも〝泣いてる〟なんて……っ。
すると「響希様の負けですね」と安井さん。
「凪緒様、響希様に教えてあげてください。響希様が思ってるよりも、ネコは強くしたたかだと」