唇を隠して,それでも君に恋したい。



「〜♪」 



びくりと肩を震わせる。



「今日の夜飯は何にすっかな〜……ん?」



学校随一の呑気な鼻歌。

驚いた拍子に涙も止まり,顔を上げると。

こそにはノートで肩を叩きながら歩く,和寧がいた。



「ん………と。え? 伊織? 何しよ……」



困った顔の和寧が,僕の赤くなった瞳と自分を抱くようにしゃがむ姿を見て。

表情は変えないまま,少し優しくなった声色で目の前にしゃがむ。



「なに,もう耐えらんなくなったの」

「うるさい」

「離さないくせに」



僕は和寧の首根っこをぐんと引き寄せて,その胸に顔を埋めた。

泣きつくというのは,こういうことを言うんだろう。



「好きなんだよな」

「……」

「それだけなのにな。振り向いてくれたのに」

「ふ」

「よしよし」



こくんと唾を飲み込む。

考えれば考えるほど,涙は止まらなくて。

悔しくて,悔しくて。

とんとんと背中をたたいて僕をあやす和寧に誘われるように,僕は



「ふ,う……あぁぁあぁああぁ……っっ」



和寧のシャツがグシャグシャになるくらい握りしめて,生まれて初めて,声を上げて泣いた。
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