唇を隠して,それでも君に恋したい。
「……っ。あり,がとう」
もう,こいつに足を向けて寝られないなと,少し気まずい気持ちで辿々しいお礼を言う。
「まぁね。ダチの為ならさ。ほら,行きな。演技は得意だろ」
また余計なことを。
「でもそれ」
服が。
「いーのいーの。どっかの女の子に上着でも借りるけん,それで解決」
よいしょと立ち上がって,和寧は僕に背を向けて歩き出した。
僕も,行かなくちゃ。
約束してしまったからには進まないと。
その時には,きっと……
僕は睫を下げて,保健室へと向かった。