唇を隠して,それでも君に恋したい。
「敦,乗れないの?」
そんな風に揺さぶってみても
「乗れるけど。そうじゃないだろ,伊織。一度乗ったら終わるまで下りられないんだぞ。それに気持ち悪くなったら」
敦は一切煽られることなく,冷静に言葉を返してきた。
そんなことわかってるってば。
三太だったらもっと簡単だったのに,と頬を膨らます。
「もっと優しいやつ……あの辺とか」
空中ブランコ・メリーゴーランド……
「やだ。子供が楽しめばそれでいい奴じゃないか。ほら,敦は乗れるんだろ? 行くぞ」
ぐいと右腕を引っ張る。
僕なんかの力で引けるはずもないが,優しい敦は無抵抗で体をゆだねた。
「知らないからな」
耳に届いたその言葉に,僕は口角あげた。