唇を隠して,それでも君に恋したい。

敦の言葉に僕はむっと口を尖らせる。



「振り回されるのは平気なんだ。足元がないまま浮かされるのが嫌……でもそこまで悪くなかったよ。もう乗らないけど」



そんな調子で,敦の指すアトラクションに次々と臨んでいった。

いかにも子供しかならんでいないようなアトラクションに並ぶのは恥ずかしかったけれど,乗ってみるとどれも悪くないと思えるものだった。

最後の最後に,敦は渋る僕を連れてメリーゴーランドに乗せた。


「敦」


スタッフのお姉さんの声がする。

動き出すようだ。

僕は敦を向かないで,反応した敦に言葉を投げた。


「ありがとう。朝はああいったけど,本当は少し,乗ってみたかった」


隣に並んだ馬じゃ,僕の顔は背けていったって見えているだろう。

僕は少しも敦を見ていなかったけど,敦が僕の言葉に笑ったのが分かった。



「やっぱり一度くらいは経験しておかなきゃな」



やっぱり……

敦は,遊園地の記憶がないといった僕のために,自分も付き合って色んなアトラクションを回ってくれたんだ。

回るメリーゴーランドはゆるく上下して,僕に知らない目線を教えてくれた。

……?

夕日がなにかのアトラクションに隠れるのを見た時,僕の視界なのか脳内なのか,わからない世界がちかちかと光る。

思わず目を細めると,僕の頭にある少しの記憶が呼び起こされた。

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