唇を隠して,それでも君に恋したい。

ボクを包むフオンなウワサ。


ードンッ


「たっ……」



眠たいからと目を擦り,いつもより皆の後方を歩いて移動していたタイミング。

思いがけない衝撃に,僕はつい反射的に顔を歪めた。

パッと顔をあげると,短髪の男が驚いたように僕を振り返る。



「あ,わりっ……っ……」



? なに?

わざとじゃないのはもう分かっていた。

注意を逸らしていたのは僕もだし,声をあげてしまったのは大袈裟な気もして申し訳ないと思う。

でも,お互いそれで終わればいいのに。

相手は"僕の顔"を見て,更に驚いた顔をした。

知らない人,の,はず。

だけど。



「お前って,え……百合川(ゆりかわ)の」

「カズ? 何して……って余計なこと言うなって!! 違ったらかわいそーだろ」

「でもほんとだったら」

「メーワクかけんなっって」



ユリカワ。

って,何? 人? 誰?

僕が,何なの?

用がないなら僕,もう行きたいんだけど。 
 


「ごめんなー」



ああほら,敦が僕を見てる。

スズやリューも気付いて,足を止めていた。

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