唇を隠して,それでも君に恋したい。

僕は初めての体験に緊張していた。

同姓ですら,こんなにも自分を見せたり触らせたりしたことはない。

胸元の柔らかさは,僕と同じで,それでもやっぱりどちらでもない僕とは違っていて。

お互いを埋めるように抱きしめて,触れて,体温を感じる度切なさが増していく。

ずきずきと,頭で警鐘がなる。

知らない声,知らない感覚。

すべてから解放されるように,ぷつりと脳内で響いた。

こんなの,だめだ。 

僕には,いくら百合川さんの望みだとしても,こんな失礼な真似,できない。

僕は



「ひぅ……っ」

「伊織くん」



突然,堰を切る。

涙が顔に落ちて,驚いた百合川さんは素早く僕を呼んだ。

僕にはできない。

こんなにも優しい女の子を,汚すような真似。

できない。

罪悪感が押し寄せて,とまらない。

互いの着衣を戻しながら,僕は謝った。

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