唇を隠して,それでも君に恋したい。
「ごめん,百合川さん。こんなこと言わせて」
「ううん。ユリユリも……,ごめん」
お互いに密着して,布団の上に倒れる。
気づけば冷えていた僕のからだは,ようやく彼女の体温に温まり始めた。
僕にしがみつく彼女を抱き締めて,早い心音を聞きながら。
今僕の腕の中にいるのが,敦だったらいいのになんて。
何よりも最低なことを思って,隠すように瞳を閉じる。
怠慢にふらふらとことなかれな顔をして生きている僕は,か弱そうにも,何においても受け身そうにも見られることが多いけど。
皆が知らないだけで。
僕は,誰かに抱き締められるよりも,今みたいに抱き締める方が好きなんだ。
しばらく僕らは,何も言わずそうしていた。
「じゃあ,またね」
「ヒメ」
彼女は,かたくなに送ろうとする僕を拒んだ。
そのせいで玄関で見送ることしかできない僕は,彼女を引きとめるように名前を呼ぶ。
すると,目を見開いて,僕はその綺麗な瞳が揺れるのを見た。
「こんな時に名前で呼び捨ててくるなんてずるい」
震える声で溢すヒメ。
僕は抱きしめるような気持ちで微笑んだ。