唇を隠して,それでも君に恋したい。


「そうしてって言ったのはヒメの方でしょ。ユリユリにしようか」



そんな慣れない冗談を言ってみる。

ヒメは素早く表情を変えて,むっとほっぺを膨らませた。



「断ったくせに……ヒメのままがいい」

「もう,しないよ」



唐突に,そう切り出す。

ヒメは分かっていると頷いた。



「うん……だいすき」



脈絡。

そう思う僕の方も大概だったと,僕は反省した。

袖を可愛らしく握ったそのしぐさに,僕は『そういうところが』なんて幻聴を聞いた。

袖を握る力を緩めて,ヒメは両手を広げた。



「だきしめて」

「それくらいなら,いつでも」



素肌に触れたばかりの身体を壊さないように,僕はヒメをふわりと抱き締める。



「本当に?」


探るような声に



「うん」


と応える意思を見せる。

口を開きかけた僕より先に,ヒメは口を開いた。
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