唇を隠して,それでも君に恋したい。
「ふ……」
ばかめ,と。
溢れた嗚咽を飲み込んだ。
仕方なく駆け出して,その太く安心する首に巻き付く。
そのまま頭を抱き締めるように固定して,顔を傾けた僕は,観覧車でのキスよりずっと強く自分のそれを押し付けた。
目を見開いた敦が,それでもすぐに僕を受け入れ目を閉じる。
数秒したのち,僕はどこか名残惜しくなりながら唇を離した。
君は本当に何も変わらないな。
僕はもう,ずいぶん変わっただろう。
お互いいい齢だ。
良くもこんなにも長い月日を……お互い想い続けたと思う。
僕は,君を,あの観覧車での日を境にした辛い日々と君への想いを。
忘れたことなんて一度もない。
「何ともないか」
敦があの薬を本当に服用したなら,発表してしまった以上,何かあっては困るのだけど。
あの日を繰り返すキスに,僕は聞かずにはいられなかった。
「……すごいな,伊織。12年も頑張って来たんだもんな」
僕の質問に答えているような逸らしているような言葉を落として,敦はさらりと僕の髪の毛を掬う。
遊ぶように触れたまま僕を敦は称え褒め続けた。