唇を隠して,それでも君に恋したい。
「百合川さん?」
「そう。百合川 姫。ひめって呼ばれるのはあんまり好きじゃないから,ユリユリって呼んでね♡」
瞳をきゅっとつむって,百合川さんは何故か首もとでハートを作る。
「えっと」
何をしたいのか分からなくて,僕は困った。
僕に話をしに来たんじゃ,ない? の?
「一応確認なんだけど,僕達初めましてだよね?」
「うん,そうだね。初めまして,羽村 伊織くん」
「僕達に変な噂が立ってるんだけど,どうしてなのか百合川さんは知ってる?」
僕の困った瞳を見て,百合川さんはかくんと肩を落とす。
「それはねぇ,ほんとにねー。わざとじゃ,無かったんだけど……ユリユリ,今日はそれを謝りに来たの」
「謝るって」
「伊織くん。ユリユリ,あなたのことが好きだったの」
「「えっ」」
突然のカミングアウトに,スズと2人,いや様子を窺っていた他の生徒も言葉を失う。
僕は何から返すべきなのか分からなくて,右手を口元においた。
告白,にしては思いきりがいいけれど。
初めて他人から告げられた気持ちに,戸惑いを隠せない。
「遠くから眺めるのが好きだった。でも……諦めることにしたの。伊織くん,他に好きな人がいるみたいだったから」
「え」「え?!」