唇を隠して,それでも君に恋したい。
「やめ……!!」
手際よく抜き取られるマスク。
それと引き換えるように身体を押し込んでくる百合川さんは,妖しく微笑んで僕の唇を狙っている。
防げない,どうしよう。
助けて,だれか……っっっ。
「っ伊織ーーー!」
身体か後ろへと引っ張られる。
なすがままに,僕は後ろへと倒れた。
数人分の倒れた音がして,数秒後。
「ったた」
僕が下敷きにしたと思われる人間の顔を確認するために,僕は目を開く。
「! リュー!!!」
ごめん。
直ぐに起こすよ。
でも,助かった,本当にありがとう。
「痛くない? ごめんね」
僕を引っ張って,倒れてまで助けてくれたのは,掃除場所から帰ってきたであろうリューだった。
事も無げに頷くリューの額にはうっすらと汗が滲んでいて,僕はほっと眉を垂らす。
良かった。
僕には人とキスすることが出来ない理由が……