唇を隠して,それでも君に恋したい。
「知ってた訳じゃない。気付いたのは……敦が連れてきて,お前を認識して直ぐだったと思う。伊織の挙動は誰が見ても異質で,でも俺だけはそれらに見覚えがあったんだ」
見覚え,という言葉に驚く。
この星全体で,2000人程しかいないと言われる僕たち。
まだ互いに16だというのに,僕以外など,この狭い地域にそれこそどんな確率だと思った。
「俺の……母親が。S·Pなんだ」
母親。
その言葉に,僕は衝撃を受ける。
S·Pには性別の概念が殆んど無い。
生まれた瞬間の診断は,その構造から大抵男に位置付けられる。
他人に見分けを付けさせるなら,髪の伸びやすさくらいだろうか。
この身体で,この環境で。
愛する人と両思いになって子をもうけられる人が,一体どれだけいるだろう。
割り切って同姓恋愛と言うことにするでもなく,自分が女だと主張して理解を得る事は並大抵のことじゃない。
「俺はずっと母親を見ていた。母の特殊性を知ったのは,自分の特殊性を知った時。父親が誤って,自分ではなく母の食べかけを俺に与えてしまったときだった」
そこには確実に唾液が含まれる。
リューは影響を受けなかったことで,直ぐに然るべき機関へと連れられた。
その結果が,リューは影響を受けない,だったのだろう。
「無理やり知らないやつの唾液を飲ませられたりもした。だから,間違いない」