唇を隠して,それでも君に恋したい。
「不器用で……気遣い屋なところ。素直で,自然体な笑顔を浮かべるところ」
僕のしらない,僕の姿。
並べられた言葉に,思わず唇を噛む。
聞いたのは僕なのに,それがこんなにも恥ずかしいとは思わなかった。
「それから,一途なところ」
目を見開いて,咄嗟にリューを見る。
そしてその意味を理解した途端,僕は赤面した。
百合川さんに詰め寄られた時とは違う。
恐怖や焦燥より先に,僕は素顔を表に出してしまった。
リューは僕の事を本当に全部,分かってたんだ。
「だから返事はいらないって言ったんだ。でも……そうやって一瞬でも真面目に俺の事を考えて,気にして,そうゆう質問してくれるのは嬉しい」
「りゅ」
リューはワークを抱え直して,僕のそばに寄る。
僕は思わずたじろいで,一歩後ろに下がった。
けれどリューはそこで止まらず,最初から分かっていたかのように僕を追い詰める。
机もなにも置かれていない廊下で僕は,目をつむって背中を壁につけた。
こ,れって……
まさか自分にそんな日が来るとは思わなかった。
無意識に自分にあてられたワークをぎゅっと両手で抱える。
リューは僕の真っ赤な耳の横に手を置いて,そっと近付いてきた。
リューの胸板が肩に触れて,頭の横にリューの呼吸を感じる。
数秒して,リューは静かに頭を持ち上げた。