唇を隠して,それでも君に恋したい。
「えなんで。いいじゃん3人でも」
すかさず挟まった声に,僕はノーと答えた。
「やだ。僕にはあと3人友達がいるし,君とはべつに仲良くなりたくない」
1人はコミュ力おばけ。
もう1人は片想い相手。
もう1人も想われ中。
僕は少し思うところがありながらも,そんなこと知る由もないのだからと振り向きながら胸を張って拒絶した。
そんな僕をスズが窘める。
「まあまあ。いいじゃん伊織。まだお互いなんにも知らないし。ところで,なんで和寧は伊織に懐いてんの。こんなに嫌がられてるのに」
「嫌がられてるって……心外だな~。僕はただ伊織が好きなだけだよ。ね」
ちらりと目線をやられて,僕は頭から発火しそうになった。
ふるふると拳を握り,和寧を睨む。
「だから! そういう事を恥ずかしげもなく口にするな……っっっ!!!!!」
うおっと目を丸くしたスズをおいて,僕はそのまま教室を出た。
しばらくぷんすかと怒りながら,顔を洗い冷静になる。