唇を隠して,それでも君に恋したい。

教室に戻ると入り口には丁度敦がいる。

声をかけようとして,その奥の三太に目を向けげんなりとする。

いつの間にか,三太は和寧の前で楽しそうにはしゃいでいた。

僕が少し外している隙に……っ

分かってはいた。

三太は人見知りするタイプではないし,寧ろ懐っこくて直ぐに誰にでも話しかけられるやつだから。



「敦はいいのか」



なんて僕はちょっぴり拗ねたような声を出してしまう。

敦は僕を見て,こくりと頷いた。



「ああ,別に」



その言葉にほんの少し安堵して,僕は敦を見上げる。



「さっき少し話したから」



でも,僕の期待した肯首では無かったようで。

僕はむっと唇を引き絞った。

あっそ。

なんて,心の中で毒づいてみる。
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