唇を隠して,それでも君に恋したい。
「部屋は大部屋でいいよな?」
僕は少し考えて,和寧と顔を見合わせたあと,こくりと返した。
そうだった,当然そうなると思って,ホテルの部屋割りのことなんて少しも考えていなかった。
楽しみが勝って,実のところ僕は大した計画をしていない。
「なー,スズもフルーツ食べたいって言ってたよな?」
僕たちが話していると,三太がやって来る。
「ついでにバーガーも食いたいんだけど,一緒なら班一緒で申請しよーぜー」
三太ですら現地のことを調べているのかと思うと,少しだけ悔しくなった。
「ああいいねその決め方。じゃあ取りあえず俺と三太で組んで……」
目の前でぽこぽこと話が進んでいく。
このまま呆けていたら,敦と同じ班にはなれないかもしれない。
「あの……」
はっとして取りあえず声をあげた。
その僕の肩を抱くようにして,突然和寧がにこりと笑う。
細められた瞳が,打ち解けたとはいえまだまだ不気味である。