唇を隠して,それでも君に恋したい。
「こんなんごちゃごちゃ言うことでもないけど。亮介がうまいことまとめてすっと分かれてくれて良かったな。3人は班行動,どこに行きたいとかないの?」
「僕は別に……というかまだあまりよく分かっていない」
「俺もとくに。ただ昼飯の前になんか入れときたい。伊織はそんな食べないだろうから,簡単なものでいい」
リューが何も提案できない僕を案じてか,珍しく長文を発する。
「俺は全員に合わせる」
敦は本当にあまり意欲はないようだった。
和寧が明るく話を引っ張ってくれるけど。
どうしてか,その時の空気はどこか異質に感じた。
敦はどこか意識がぷらんとしているし,リューはいつも通り見守るようにして話を聞いている。
そんな2人と,1人だけ浮いているようにすら感じる和寧の明るさに僕は戸惑った。
和寧は何かに気がついているのだろうか。
あえて2人を無視するように話を進行する姿に,小さな不安が生まれる。
楽しいだけになるはずの修学旅行,何かが起きるような予感がして。
僕はどこか,落ち着かない気持ちになった。